世界でもっともインスタ映えする場所として有名な、美しいボリビアのウユニ塩湖。ここには世界最大規模のリチウムが埋蔵されています。
リチウムといえば、スマートフォンや電気自動車などにも使われており、世界で注目されている重要な資源です。
ボリビアで起きた政治的な混乱も、実は資源を巡る世界の動きと無関係ではありません。
先住民出身の大統領がやりたかったこと
2019年11月、ボリビアで14年の長期政権を担った、エボ・モラレス大統領(当時)が突然辞任し、メキシコに亡命してしまいました。
エボ・モラレスは貧困層が多くを占める先住民の出身で、貧富の格差の解消や、識字率の向上などにも力を尽くしました。
彼がやりたかったことのひとつに、「自国の産業を保護して、育てる」ことがありました。ボリビアはそもそも、リチウムのみならず、資源が豊富な国です。
銀や天然ガス、石油、銅やスズも豊富です。
ボリビアに限らず、多くの中南米諸国で、よくある現実…。それは、豊富な資源をアメリカ合衆国などの海外資本や、海外と取引している国内の特権階級が握って、利益を独り占めしてしまうことです。
その結果、国内で貧富の差はなかなか解消されなくなってしまいます。
エボ・モラレスは天然ガスや石油を国有化して、外国資本ではなく、資源をベースに国内産業を発展させたかった。
ところが。エボ・モラレスは、アメリカ合衆国、カナダ、中南米諸国から成る米州機構に、選挙の不正を指摘され辞任。その直後、反体制デモや、治安維持軍隊との衝突などで混乱が広がりました。
アメリカ政府は「民主化な移行」と歓迎
こうした状況に関して、ポンペオ米国務長官は11月13日、エボ・モラレスがメキシコに亡命した後、上院第二議長のアニェス暫定大統領が就任したことについて、憲法に基づく「民主的な移行だ」と支持する声明を出しました。
「民主的」というマジックワード
選挙で「不正」があったから、「民主的な」大統領に変わった。この流れだけを聞くと、あたかも理想的な状況になったかのようなイメージを受けますが、事態はそれほど単純ではありません。
選挙不正とはどんな内容だったのか。
ボリビアがアメリカ合衆国に反発していたのはなぜか。資源を巡る各国の思惑はどうなのか。
はたまた貧困問題の解決が急務だったボリビアの国内事情はどうなのか。
私たちが日本で、あるいは欧米のメディアを通じて得られる情報はあまりにも少なく、上記のようなポイントはほぼ伝えられていません。
ボリビアの大統領亡命のニュースさえ、大きく取り上げられてはいなかったでしょう。
しかし、私たちの生活に密接に関係している資源はもちろん、アメリカ合衆国とのビジネス、はたまた人気の観光地の国内事情など、決して遠い国の出来事ではありません。
ケパサミカサでは、中南米をはじめ、いろいろな国のメディアや現地からの情報を通じて、世界で起きていることは私たちの家で起きていることだ(ケパサミカサ)という視点でニュースを掘り下げていきます。