市民の連携で感染が判明~キューバの新型コロナウィルス対策

キューバ
新型コロナウィルスのニュースを伝える共産党の機関紙「グランマ」

キューバ国内で3月11日、初めて新型コロナウィルスの感染が発表されました。

1959年のキューバ革命以降、あらゆる困難や危機に直面してきたキューバは、
①国民が重大性を認識する
②協力し合って乗り越える
という方法をとってきました。

新型コロナウィルス感染への対応でも垣間見えるのは、国民の意識を高め、パニックに陥らず「淡々と取り組む」危機管理対応です。

もちろん、爆発的な感染で深刻な状況にある国の入国制限や封鎖は国民を守るために当然でしょう。しかし、世界的な広がりを見せる新型コロナウィルス対策に関して、国家間で連携をしているようには見えません。むしろ「自国を守る」という政治家の決断の多くが、パフォーマンスや政治利用に見受けられます。マスメディアも視聴者を釘付けにするために、結果として恐怖感や不安感を煽る役割を果たしています。

そのような状況で、急ごしらえの対策でパニックに陥るのではなく、キューバは市民と力を合わせて「出来ることをやっている」ふうに見えます。

移動中の咳で気づく

国内で初めて、新型コロナウィルス感染がわかったのは、9日に首都ハバナに到着したイタリア人観光客3人(61歳男性、57歳女性、60歳女性)です。入国後、約350キロ離れた古都トリニダーに向かい、民宿に宿泊していました。ところが、10日に呼吸器系の症状があったため、ハバナにあるペドロ・コウリ熱帯医学研究所(IPK)に緊急搬送されました。入院検査の結果、11日に陽性がわかりました。

地元サンクティ・スピリトゥス州のエスカンブライ新聞社が、このイタリア人観光客をガイドした女性にインタビューした内容によると、今回の緊急搬送は家庭医(キューバではコミュニティ一人ひとりの健康状態を把握して総合医療ができる医者の数が多い)が診るまでもなく、女性ガイドと民宿オーナーの連携のおかげだったようです。

女性ガイドによると、ハバナからトリニダーへの道中、イタリア人男性が咳をしていたのに気づきました。民宿オーナーからも、イタリア人観光客が「夜中、咳をしていた」と聞いたため、外国人用の病院に連れていきました。血液検査、胸のレントゲン検査をしたところ、感染の疑いがあったため、そのまま救急車でハバナのIPKに運ばれたのです。

日常会話に医療用語

一方で女性ガイドや民宿のオーナーなど、濃厚接触者の7名はサンクティ・スピリトゥスの隔離用病院で経過を観察しています。3時間置きに検温をして、症状が出ればウィルス検査をするそうです。

さらに、ビジャクララ州に住むキューバ人男性の感染も確認されました。この男性の妻は、イタリアのロンバルディアに住むボリビア人です。2月24日に妻はキューバに入国後、27日から軽い呼吸器系の症状が確認されていました。3月8日、キューバ人男性にも呼吸器系の症状が出て医療施設に出向いた後、ハバナのIPKで検査をするため、隔離入院となりました。妻は陰性、キューバ人男性は陽性と判明しましたが、現在ふたりの容態は安定しているということです。

キューバは医療に力を入れていますが、新型コロナウィルス対策で、キューバ医療が優れているかは論点ではないと思います。むしろ、資金がないなか、キューバ式危機管理政策として人材を育て、国民の病気や健康に対する意識を高めることで編み出されたのがキューバ医療制度である、というのがポイントだと思います。

その甲斐あって、キューバ人は医療、健康オタクといってもいいほど、日常会話に小難しい医療用語を頻繁に使います。新型コロナウィルスに関しては政府も情報発信に力を入れており、すでに市民は相当な知識を消化しているのではないかと考えます。それゆえ、女性ガイドや民宿オーナーの迅速な行動につながったのでしょう。

そもそも、ここ一年でトランプ米大統領政権による対キューバ経済制裁強化は激しさを増しており、キューバは食べていくのに必死という状況が続いています。新型コロナウィルスは脅威とはいえ、国家の緊急事態は今始まったことではないのです。

次回は新型コロナウィルスに対するキューバ政府、市民の対応をさらに詳しく紹介していきます。

(参考:キューバ政府発表資料、共産党機関紙「グランマ」、地方紙「エスカンブライ新聞」)

ケパサenミカサ編集部

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